「おお…」。西郷少尉は、目前の光景に目を見張った。待機所の前の列線には、真新しい単発機がズラリと並べられていた。その数は二〇機。パイロットの方が数が多いが、交代でテストと慣熟飛行をするらしい。すべて単座の同一機種である。つまり戦闘機ということになる。機体には、まだ塗装がほどこされておらず、ジュラルミンが朝日を浴びて銀色に輝いている。零戦の機体は、薄いジェラルミンを使っているために、トタン板でできているような印象があった。拳でたたけば、ボコボコとへこむような音がした。だが、いま目の前に並んでいる銀色の戦闘機には、ジュラルミンがたっぷりとおごられているようだった。拳でたたいても、カンカンと硬い音がするにちがいない。西郷少尉は、尾部の下に目をやった。尾輪の手前にくぼみがあり、そこから着艦フックが覗いていた。ということは、零戦に替わる新しい艦上戦闘機か。
(「BOOK」データベースより)