「武蔵」は、新編制された第五艦隊の旗艦となり、連合艦隊司令長官の山本大将が座乗した。山本大将は、「武蔵」に“遊撃戦艦”の名を与えていた。遊撃―すなわち“ゲリラ”の意味である。東に西に、自在に動きまわり、敵を撹乱するのが遊撃戦艦の役目である。実際、南雲中将ひきいる戦艦「大和」と、山本大将が乗る戦艦「武蔵」が、バシー海峡とグアム島近海に現れたことにより、アメリカ海軍は、大混乱をきたしていた。離れた場所に、同型の戦艦がいれば、これが別々の二隻の戦艦であることは、容易に想像がつく。山本大将の狙いは、世界の耳目を「大和」と「武蔵」に引きつけることにあった。そして、その狙いは、いま確実に成功をおさめていた。
(「BOOK」データベースより)